実現したこと

ルカ福音書1章1~4

 

十字架の出来事は、紀元30年頃に起こりました。
パウロ書簡が書かれたのは、紀元50年前後です。
十字架の出来事から20年ぐらい後のことです。
マルコ福音書が書かれたのは、70年代です。
そのマルコ福音書を下敷きにして書かれたマタイ福音書とルカ福音書は、80年代です。

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紀元70年に、エルサレム神殿とエルサレムの町が、ローマによって破壊されました。
神殿を失って、どのように礼拝を続けるか、ユダヤ教において激しい議論が起こり、
ナザレのイエスを主と仰ぐ者たちを追放することが決議されます。

こうして、ユダヤ教からキリスト教が分離したのです。

しかも、ユダヤ社会から排除されただけでなくて、ローマ帝国からも迫害されるようになります。
福音書は、こういう時代背景のもとで書かれたのです。

「すべての事を初めから詳しく調べていますので、順序正しく書いて・・・」(1:3)

と述べるのです。
せっかくの労作ではあるが、マルコ福音書は不十分だ、
大事な話がたくさん抜けている、と思ったのです。

だから、自分が徹底的に調べ、資料を集める。
年取っているが、まだ生き証人がいる。
その人たちから話を聞いて、順序正しくまとめようとしたのです。

「わたしたちの間で実現した事柄について・・・」(1:1)

「実現した」は独特の言葉です。
プレーローという言葉に、わざわざ「完全に」という言葉を足してプレロフォレオーという言葉を使っています。
「完全に成就した」、しかも「神によって」というのです。
「実現した」という言葉は、ルカ福音書と使徒言行録の大事なところで繰り返されています。
主イエスが、ナザレの会堂でイザヤ書を朗読する場面で、

「主の霊がわたしの上におられる。貧しい人に福音を告げ知らせるために、/主がわたしに油を注がれたからである。主がわたしを遣わされたのは、/捕らわれている人に解放を、/目の見えない人に視力の回復を告げ、/圧迫されている人を自由にし、主の恵みの年を告げるためである。」(4:18~19)

そして、こう宣言されます。

「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」(4:21)

「イザヤの預言が、今、成就した」という宣言によって、主イエスの活動開始を告げるのです。

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そして、復活の主が弟子たちに現れる、ルカ福音書の結びの場面です。

「わたしについてモーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。」(24:44)

ルカ福音書は、「神の言葉が実現した」と、繰り返し語るのです。
(2020年11月15日)

 

 
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