低い者が引き上げられる

マタイ福音書22章41~23章12

 

ファリサイ派は、紀元70年にローマによって神殿が破壊された後、
ユダヤ教を指導するようになり、ナザレのイエスを救い主と仰ぐ人たちを、異端として排除します。
福音書が編集された頃には、ファリサイ派に対する恨みが募っていたのです。

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ですから、「彼らが言うことは、すべて行い、また守りなさい。」(23:3)は、
「彼らの言うことを守りたいと思うなら、その通り守るがいい。」という痛烈な皮肉です。

「あなたがたのうちでいちばん偉い人は、仕える者になりなさい。だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。」(23:11~12)

旧約聖書で「へりくだり」はシャーファール、「低い」とか「卑しい」という言葉です。

「主は高くいましても/低くされている者を見ておられます。」(詩篇138:6)

「神は…卑しめられている者を高く上げ/嘆く者を安全な境遇に引き上げてくださる。」(ヨブ記5:11)

「高い者は低くされ、低い者は高くされる。」(エゼキエル書21:31)

低くされている者が、高くされると宣言しています。

「わたしは、…打ち砕かれて、へりくだる霊の人と共にあり、へりくだる霊の人に命を得させ、打ち砕かれた心の人に命を得させる。」(イザヤ書57:15)

新しい聖書協会共同訳では、「へりくだる霊」が「低められた人」に変わりました。
「へりくだる」と訳したのでは、本来の意味から外れるからです。
神は、弱い者、小さい者、低い者を助け、虐げられた境遇から救い出してくださる、というのです。

「へりくだる」と訳されているのは、タペイノーという動詞、タペイノスという形容詞です。
価値が低い、弱いという意味の言葉です。
「マリアの讃歌」にも、繰り返し出て来ます。

「わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。
身分の低い(タペイノー)、この主のはしためにも/目を留めてくださった」(ルカ福音書1:47~48)

「身分の低い者(タペイノーシス)を高く上げ、・・・飢えた人を良い物で満たし・・・」(ルカ福音書1:51、53)

無力な少女を用いてくださった、と神を誉め讃えるのです。

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クリスマスの物語は、無力な姿で世に来られた幼子によって、低い者が引き上げられることを表しています。

わたしたちは、周りの人からの評価を気にし、名誉をほしがる思いに、縛られています。
そんなわたしたちも、すべての人に仕える者として十字架にかかってくださった主イエスを仰ぐことによって、
解放され、自由な者とされるのです。
(2020年2月16日)

 

 
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