からし種とパン種のたとえ

マタイ福音書13章31~35

 

からし種は小さな種ですが、成長して3mから5mにまで大きくなります。

「空の鳥が来て枝に巣を作る」(13:32)

という言葉を聞いた人は、エゼキエル書31章とダニエル書4章の記事を思い出したはずです。
小さなからし種が大きな木に育つのは、神が命の力を注いでおられるからだ。
そのことを忘れて驕り高ぶるなら、エジプトやバビロンと同じ運命をたどることになる。
あなたがたは、自分が小さなからし種に過ぎないことを忘れてはならない。
そんな意味が隠されています。

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「天の国はパン種に似ている。」(13:33)

「パン種のたとえ」は、数時間寝かせれば膨らんで、見事なパン生地になるというたとえのように見えます。

しかし、ユダヤの社会でパン種は、汚れを持ち込むものであり、避けるべきものとされました。

「主にささげる穀物の献げ物はすべて、酵母を入れて作ってはならない。」(レビ記2:11)

過越祭には、パン種の入っていない固いパンを食べます。
これは、出エジプトの故事を踏まえています。
エジプトを出立するとき、パン生地が膨らむのを待つ余裕がなく、慌てて出発したのです。

「三サトンの粉」(13:33)は38リットルで、パンを焼くと100人分になります。
これは、創世記18章のアブラハムの物語につながっています。
アブラハムは、神の使いと知らずに、旅人を盛大にもてなしました。
3人の旅人は、1年後にサラに男の子が与えられると告げます。

発酵によって生まれる食べ物が素晴らしいかどうかは、好みによっても左右されます。
青カビの生えたブルーチーズを、とても美味しいと言う人と、気持ち悪くて食べられないと言う人がいます。
ある人にとってとても素晴らしい食べ物でも、別の人にとっては見るのもいやな食べ物なのです。

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主イエスの言葉は、ファリサイ派の人たちや律法学者、祭司長たちには、毒を撒き散らすパン種としか思えませんでした。
しかし、主イエスの言葉は、深くわたしたちに浸透して、驚くほど大きな実りを生みます。
わたしたちは、神の言葉をいただいて、変えられていくのです。

この「からし種」と「パン種」のたとえを、受難週にふさわしく受け止めたいと願います。
(2019年4月14日)

 

 
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